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教育鼎談
日本再生とは教育再生のことです
 
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中川 本日は教育、スポーツ界で活躍してこられた参議院議員の橋本聖子先生と義家弘介先生にお出でいただきました。3人で我が国の教育問題について語るのが本日の趣旨です。
私は国政に送っていただいて以来、「持続可能な社会」をライフワークとして働いてきました。それは私の決意であり、政治家としての私の存在価値だと考えました。50年、100年先を考えた時、日本は果たしてこのままで良いのか。国家の財政や地球環境が今の問題を抱えたままで進んでしまったら、社会はきっと破綻してしまうだろうと思っています。
昨年9月に私は参議院文教科学委員長に就任いたしました。50年、100年先の日本のために、教育は今のままで良いのだろうか。日本の未来のために私たち政治家は何をしなければならないだろうかと改めて考えているところです。
橋本先生はオリンピックの女子世界最多出場記録をお持ちで、スポーツ界における総合的なリーダーとしてご活躍されています。そして、私にとりましては参議院文教科学委員長の先輩でもあります。また、義家先生は内閣の教育再生会議担当室長を務められ、「ヤンキー先生」の愛称通り、教育一筋と言っても過言ではない人生を歩んでこられた方です。
私は大蔵省で文部、科学技術担当の主計官を務めた経験があり、教育問題にはずっと関心を持ってまいりました。参議院文教科学委員長に選任していただき、とても感謝していますが、同時に責任の重さを痛感しております。
そこで、私といたしましては、教育の専門家であるお二人のご意見を是非とも拝聴したくて、今日はこのテーマ、このメンバーを選ばせていただきました。本日はコーディネーター役をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。


最近の子ども達は?

中川 さてまずは、最近の子ども達について、義家先生はどのように感じておられますか。

義家 一昔前と比べて、まず胸板がおそろしく薄いのが気になります。思わず「おい、メシは食ってるのか」と声をかけたくなってしまします。足が長くて、スタイルはかっこいいですが。

橋本 スタイルは良いですが、姿勢は極めて悪いですね。

義家 以前は骨格まではしっかりしていたと思います。今の子ども達は骨格自体が細くなっている。食事がいい加減になってしまっています。つまり、食育というものが軽んじられているのです。
中学受験をする小学生も多く、塾に行くのもだんだんハードになり疲労も出てきます。体の基本は食事ですが、親の食育、あるいは社会構造全体として食育がなおざりになってしまっている。夜の9時半まで塾の授業があったら、塾が始まる前に流し込むように食べるか、9時半以降にご飯を食べるかになります。体を作る盛りに果たしてそれで良いのかと、すごく今の子ども達の在り方が心配になります。
青白き秀才が通用する時代はもう終わってしまいました。サバイバルの時代ですから。

中川 親の責任は大きいですよね。

義家 もちろん親が一番重大な責任を背負っています。様々なモチベーションの持たせ方にしてもそうです。最近の子どもは、膝小僧を見ても、皆きれいですよ。ウチの子どもはぐちゃぐちゃです。日常の食事も運動についても、本当に大丈夫かなと思うような子ども達が増えています。

中川 昔と今を比べると遊べる場所が少なくなり、外で走り回る環境も随分変わってきたと思うんです。私は東京生まれの東京育ちでしたが、それでも当時はかなり外で遊んでいました。今から思えば、家の中で遊ぼうとしてもテレビゲームもなく、面白いものも他になくて、否応なしに外に遊びに行っていたのでしょうが。お二人の子どもの頃はどんな感じでしたか。

  橋本 私は北海道の野山で遊びました。遊びと言えばやはり屋外で、もうそこら中が全て遊び場でした。そんな中で、スケートは一つの遊びとして物心ついたときからやっていました。もちろんそれは競技ではなく、日常生活の延長であり遊びだったのです。私の生まれた所はウィンタースポーツのメッカでした。でも家の側にスケートリンクがあったわけではなくて、田んぼや池に氷が張っていて、友達皆で長靴のまま滑ったり、アイスホッケーをしたりしていました。
私と違って、私の子ども達は都会育ちで、かわいそうだなと思う時があります。だから春、夏、冬の休みはなるべく北海道の姉の家に行かせたりします。その間離ればなれになりますが、私は必要なことだと考えています。

義家 私は長野の田舎で育ちましたが、遊びというよりも畑の手伝いをさせられて体が鍛えられました。学校から帰ってくると爺さんに連れられて畑でリンゴの作業、季節によっては桃の作業。一生懸命働きました。結果として食物に対する感謝が生まれ、心身も鍛えられた。その後ちょっとぐれちゃいましたが。

中川 やはりお二人とも、自然に体を動かすような、体を鍛えることにつながる生活環境があったわけですね。今の社会環境とは随分と違っています。

義家 しかし、あるがままの環境ばかりを嘆いていても、問題は先に進みません。「ではどうするのか?」を常に考えなければいけません。私の例で恐縮ですが、私は立地条件の利便さよりも、まずは自分の子どもにとっての環境を考えて住む所を決めました。近くには遊び場も多いし、交通量もそれほど多くない。少し行くと自然も残されています。何を親が重視するのか、その選択は子どもに影響すると思います。

中川 やはり親の責任は大きいのですね。

橋本 科学技術の進歩の反動、社会環境の変化が子ども達に影響を及ぼしていると思いますが、特に科学技術が進歩すると、必ず昔にもどしてあげなければいけない部分がどこかに生じます。それができていないから大きな問題になっているのだと考えます。


橋本聖子議員プロフィール
橋本 聖子 [ はしもと せいこ ]

昭和39年北海道勇払郡安平町早来生まれ。昭和59年より平成8年まで7回のオリンピックに出場。平成4年アルベールビル大会にて、銅メダル獲得。平成7年参議院議員初当選。現在3期目。平成13年参議院文教科学委員長。平成20年9月より外務副大臣。国内外の公務をこなす毎日だが、プライベートでは三男三女の母でもある。
著書「聖火に恋して」

「知」「徳」の教育よりは、まずは「体」を

中川 先ほど義家先生から食育のお話が出ましたが、橋本先生はこの点についてはどのようにお考えですか。

橋本 食べ物は体を作る基本です。まず何を食べるのか、その人の食事に対する姿勢で人間の基本が決定してしまいます。
実は今、スポーツ界では危機感を持って食育に取り組んでいます。様々なスポーツの分野で、能力のある小さい子ども達の発掘を行っていますが、その際に特に重視しているのは、能力ある子ども達の親御さんに食育についての教育をすることです。骨を作る時期は決まっていて、小さい頃が特に大切だからです。食べることの重要性を分かってもらうことから始めます。
骨密度は20歳になってから上げようと思っても、ほとんど無理です。スポーツ選手で一番困るのが、いくら鍛えても基礎の基礎、元の元は強くならないという事実です。筋肉は何歳になってもよみがえります。栄養を与えて鍛えれば太く強くなります。しかし、筋肉の強さに骨が耐えられなければなりません。パワーを無闇やたらにつけても、筋肉に負けて骨折してしまいます。怪我も多くなります。私はそんなスポーツ選手をたくさん見てきました。

義家弘介議員プロフィール
義家弘介 [ よしいえ ひろゆき ]

昭和46年長野県長野市生まれ。平成7年明治学院大学法学部卒。平成11年私立北星学園余市高等学校社会科教諭。平成18年内閣官房教育再生会議担当室長。平成19年参議院議員選挙に当選。現在、参議院文教科学委員会委員などとして教育問題に発言を続けている。
主な著者「不良少年の夢」「君はひとりじゃない」「ヤンキー先生の子供がわからない親たちへ」など
義家 そうですね、橋本先生の今のお話は核心をついていると思います。
現在、文部科学省の方針として、「知・徳・体」の3つをバランス良く育成するとあります。しかし、私は、本来その順番が間違っているのではないかと思うんですね。マニュアルには「健全な肉体に健全な精神が…」とあります。そして健全な精神があるから、社会貢献や国際貢献ができるよう醸成されていく。そういう意味では「体・徳・知」の順番で、子ども達を育まねばならないと私は思うのです。
一方、現在の教育を見ていると、お受験にも代表されるように、「体」や「徳」を育まずに「知」ばかりに一生懸命、子ども達をあおり立てている風潮がすごく見受けられます。

中川 なるほど。場合によっては、体をしっかり作ってから勉強したって良いのだよ、と。

義家 ええ、近頃の風潮を見ていると、ついそんなふうに思ってしまいます。例えば今、私、2日間で2時間も寝ていません。他の仕事もたくさん入っている中で、80枚の原稿を書きました。体力と我慢と精神力がなければ、これはできない。しかし、書くための知識はいくらでもつけられると思いますよ。やる気さえあれば、「知」は何歳からでも取り返しはつきます。しかし、体力、忍耐力あるいは使命感をつけることは、子どもの頃に鍛えていないと難しいと思います。

橋本 「体」から始めよう、という考えはとても新鮮で共鳴できます。体力がついてくるからこそ、心が養われて向上心が生まれるのです。そうなると、人はさらに強くなります。人間は強くなれば、人に優しくなれるのです。自分自身に自信があれば、さらにそれを越えることによって、人に対するやさしさの持てる人間作りができます。そして、社会貢献ができるようになります。
スポーツ界はそれを目指しています。実はオリンピックで金メダルを取ることが目標ではありません。結果としての金メダルは大変すばらしいことですが、アスリートを引退しても、人生はまだまだ長い。もっと大切なのはスポーツで培った心、精神を伝えながら、次の世代に向けて自分自身がどうやって社会貢献するのかということだと思います。こうした心・精神は個人の財産であり、国の財産でもあります。財産を使わず終わってしまう人が多いのです。それを引き出してあげることのできるような、国策としてのスポーツを考えなければならない時期に今来ているのだと思います。

 
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