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平成23年の活動報告

 

北方領土訪問記〜日本を失ってはいけない〜<後編>

◆子ども達に手厚い政策
翌日5月15日(日)は朝食後、最初にアリョンカ幼稚園に行きました。
 クリル経済発展計画によって昨年12月に完成、開園しました。110名の児童が入っています。この幼稚園は本当に素晴らしくてビックリしました。日本の保育園や幼稚園とは全く違います。2歳から7歳までの修学前児童を、朝の7時半から夕方の6時半まで預かります。この幼稚園の完成で、待機児童はゼロになりました。
 遊ぶ部屋、お遊戯などをする部屋、音楽教室、お昼寝用ベッドが並んだ部屋、そして温水プール…壁にはりっぱなタイルがはめ込まれ、プールも室内も一定の温度に保たれるようになっています。メドベージェフ大統領からのプレゼントとして大型テレビと音響装置があり、ここは至れり尽くせりの幼稚園だと思いました。月謝は月に日本円にして6000円程とのことです。島にはあと2つの幼稚園があるそうです。
 ロシア政府が島の実効支配をさらに強化していくため、島で生まれた子ども達をここでりっぱに育てるのだという強い意志を感じました。まずは子どもの教育から、ということでしょうか。
 後ほど芸術学校も視察しますが、まだ社会資本が充実しているとは言えない島の中で、教育にかける熱意は大変なものだと思いました。
アリョンカ幼稚園にて
アリョンカ幼稚園にて
幼稚園の中を案内する園長先生
幼稚園の中を案内する園長先生
アリョンカ幼稚園の温水プール
アリョンカ幼稚園の温水プール
─室内の温度も一定に保たれている─
 


◆現地視察あれこれ
 次は取水場の建築現場に行きました。地下水を汲み上げて各家庭に給水をするための施設を作っている現場です。貯水タンクを作り、90〜100メートル位の深さまで掘り、地下水を汲み上げるのです。2014年の完成予定です。
 それから、古釜布の埠頭を視察しました。大きな船が停泊出来るよう深い所まで掘る工事を進めています。完成すれば鉄筋、鉄骨、アスファルトなどの資材を運べるようになるでしょう。急速に社会資本や住宅その他の建物の建設が進むはずです。北方領土がますますロシアの手によって開発され、実効支配の実績が積み上げられるだろうと不安が募りました。
 その次に、我々一行は国後島の郷土博物館を視察しました。1991年(平成3年)のオープンで、クリル諸島についての著作を多く出版しているフョードル・イワーノビッチ・ピジャノフ氏の提案による郷土博物館です。彼は国後、色丹、歯舞群島を何年もかけて考古学調査を重ねました。ピジャノフ氏が郷土博物館の初代館長です。
 現在展示室は6つあり、公開非公開を含めて6242点の資料を収蔵しています。郷土博物館と言っても全く普通の古いアパートのような感じで、展示室には国後島の植物の標本や動物の剥製、岩石の標本、民族資料などが展示されています。建物自体が古く薄暗く、日本の整然とした美しい博物館とは程遠いイメージです。
 館長の女性は、「この建物は危ない。もっときちんとした建物に引っ越せるよう政府にお願いしている」と説明しました。
 古釜布の日本人墓地にも行きました。日本人墓地はクリル日本センターの方が掃除をしてくれています。墓地内の道も掃いてあり、きちんと管理してありました。日本人の先祖が祀られているお墓をロシアの方も大切にしてくれているのだと解り、大変嬉しかったです。

取水場の建築現場
取水場の建築現場
港の埠頭の拡張工事現場
港の埠頭の拡張工事現場
郷土博物館の入り口にて
郷土博物館の入り口にて
郷土博物館の展示室
郷土博物館の展示室
古釜布の日本人墓地
古釜布の日本人墓地

◆交流会は和気あいあい
 午後は住民交流会です。交流会は行政府の建物の中の広いスペースの部屋で行われました。住民約50人が参加し、それぞれお子さんを連れてこられました。
 私達は木で製作途中のお雛様を持って行き、糊を使って子ども達がそれを完成させるというちょっとしたイベントを行いました。木工細工の専門家も何人か訪問団に加わっており、製作指導などしてもらった子ども達は大喜びでした。
 また、木材の剣玉、コマなどを持って行き、それらで遊んでもらいました。母親も参加して木工や森林などをテーマにお互い話し合い、交流を図りました。そこでは領土問題などのシビアな話題を避けて交流に徹しました。
 その後は芸術学校に行き、生徒によるコンサートを聴かせていただきました。芸術学校では中高校生がピアノ、アコーディオン、歌などを披露し、相当なレベルの高さを感じました。
住民交流会の様子
住民交流会の様子
芸術学校の生徒たちの歌を聞く
芸術学校の生徒達の歌を聞く

◆経済的には恵まれている様子
 産業は漁業中心で、漁場の良さを誇ります。酪農もやっています。
 潮の流れの関係で大変豊漁なのだそうです。北方四島周辺で魚が沢山取れて、今は北海道まで来る魚が少なくなっているようです。戦前に北方四島で漁業をやっていた日本人は、相当収入があり、お金持ちが多かったと旧島民の方から聞きました。
 また、公務員がかなり多いのでしょう。軍隊、漁業の取り締まり、国後島に駐在する行政官などで、給料もそれなりに貰っているようです。経済的には恵まれている様子でした。
 島全体は暗くて活発な島というイメージはありませんが、生活はそれなりに充実しているのでしょう。
 コンサートの後は商店街を視察しました。商店街といっても我々がイメージするようなショッピングエリアではなく、車が通れば土埃が舞うような所ですから、扉を開けたままでの営業はできません。民間のアパートのような入り口にお店の名前が書かれてあり、見ただけではお店とは判りませんが、扉を開けると広いスペースに沢山の商品が陳列されています。
 日本のコンビニよりもっと広い所に、沢山の商品がギューギューと詰まっていて、果物、野菜、お菓子、お酒など様々な食料品が豊富に揃っています。
 バスが無いので島民は車で移動します。砂利道なので、普通の乗用車では底を擦ってしまいます。ゆえに車体の高い四輪駆動がほとんどです。車はいくら掃除しても埃だらけ、我々の送迎車は一般の家庭の車ですが全て同じような車種でした。
 国後島訪問2日目の夕方は、ムネオハウスに行政府の方にも来ていただき、訪問団全員と夕食交流会が開催されました。
 翌日16日は朝食の後、島を出る手続きをしてから根室に帰ってきました。
商店の入口
商店の入口
お店の中は豊富な商品が並ぶ
お店の中は豊富な商品が並ぶ

◆ロシア政府の不遜なる態度
 ビザなし訪問団が国後島に行っているちょうど同じ時に、ロシアのイワノフ副首相、ナビウリナ経済発展相、バサルギン地域発展相、トルトネフ天然資源環境相、レビチン運輸相ら政府要人がこぞって国後島にやって来ました。約10省庁の代表40名程が参加する異例の規模の代表団で、択捉、国後両島をこの15日に訪問したわけです。
 ロシアは東日本大震災への支援を大変手厚くしてくれ、北方領土を巡る日露の非難の応酬は控えられていました。今回のイワノフ副首相らの訪問は、ロシア側の北方領土の実効支配を強化する姿勢を改めて示したと考えます。
 イワノフ副首相は、択捉島で、「道路の整備なしに発展はない」と述べています。地熱発電の必要性にも触れています。
 また、新聞報道によればサハリン州知事は、「2015年までの開発予算は現行の倍以上に増額される」ことを明らかにしました。北方四島の実効支配をますます強める姿勢を貫いています。
 一行は択捉島から空路で国後島に入ってきたわけですが、約20分間を車で回っただけで、すぐに島から出て行きました。言ってみればビザなし訪問団滞在中に政府要人訪問をぶつけてきて、強い態度を示したのです。
 ロシア側からはイワノフ副首相らが国後島に来るということは、全く聞いていませんでした。団員達からは「これは嫌がらせなのか」といった不満の声が上がりました。
 私達が芸術学校のコンサートを聴いている時に、ちょうど一行の車が学校の前を隊列を組んで通過して行きました。ロシア側のそういった姿勢には不愉快を通り越し怒りすら感じます。
 ロシア側の真意は大震災への大変な配慮ではないのです。日本側に感謝をさせる行為の裏腹は押したり引いたりの駆け引きであり、ロシア独特の外交手段の一つなのだと思います。
 被災をした日本の傷がまだまだ全く癒えていない中、国民感情を逆撫でするかのようなロシアの行動の狙いはもちろん北方四島の実効支配を固持し続ける意志を示すことだと思います。
我々ビザなし訪問団を見送る国後島のロシア人の方々
ビザなし訪問団を見送る国後島のロシア人の方々

◆返還に向けての今後
 国後島に現在住んでるロシア人の方々は大変温かく迎えてくれましたが、訪問や視察の様子から、この島を日本に返す気持ちは全く感じ取れませんでした。むしろロシア側の実効支配にかける強い意志を感じましたし、イワノフ副首相らの国後島訪問をぶつけてくるやり方を考えますと、領土返還交渉は今まで以上に容易ではなく、今後に向けて大きな壁を感じました。
 日本人は領土や主権に対する認識、理解が総じて甘いと私は思います。尖閣諸島、竹島、そしてこの北方領土。日本を取り囲む隣国が日本の領土を狙っているという危機意識を日本人は十分に共有できていません。平和ボケと言われても仕方がありません。日本の危機を国民がもっと強く認識しなければならないと考えます。
 東日本大震災で我が国は国難に遭遇しています。これを乗り越えるために、日本人は一致団結しなければなりません。同時に領土問題や主権侵害への危機を国民全体がもっと共有して、強い意志と団結をさらに示す必要があります。それが特に重要な時であると私は感じました。
 政治家は先頭に立たなければなりません。参議院沖縄・北方問題特別委員長を務める私は、国民の意識の向上、団結の先頭に立つ決意でこれからも活動を続けてまいります。
<北方対策本部HPより>


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